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3.公益事業とは

  公益事業とは、「規制をかける代わりに独占性を与える」という事業であって政府から供給区域という縄張りを頂いて商売をしている。(電気もガスも)公益事業の本来は、市場が成熟していない発展途上国など事業者の恣意的な料金等における消費者保護、即ち公平の原則を重視した弱者救済を図るために定められた認可料金で、保安も含めて規制されている事業である。
 成熟した市場を持つ日本では全部フリーマーケットにすべきではないか思われるが、未だに東京電力、東京ガス等日本有数の優良企業がこの事業法(事業保護法である)の適用を受けてぬくぬくと商売しているのはいかがなものかと常々考えている。天下の小泉改革でも明治以来の事業形態を変えるには一朝一石では行くまい。

4.公益事業料金の仕組みとそのメリット

 公益事業料金は総括原価方式により算定される。総括原価方式とは、総括原価(原料費、労務費、修繕費、減価償却、その他経費、税金、事業報酬等)と販売量(過去3ヵ年の販売実績で想定)を想定して総括原価/年(売上高)を算定し、複数2部料金(基本料金と従量料金を算定する)を算定し、経済産業省の認可を受ける。
 したがって、想定されたガスの販売量さえ達成できれば事業報酬は組み込まれているので会社はつぶれないようになっている。よって、ガス事業法は保護法であるといえる。ガス屋はガス料金を算定できるようになれば一人前で、協会で料金関係に携わったおかげで経理関係・事業収支まで読めるようになったのは収穫である。

 それではここで料金算定でのメリットを少し披露しよう!
  1. 総括原価方式では、想定販売量(例えば10万立米)を決めて算定するのでその会社が頑張って11万立米販売したとすると11万―10万=1万立米分、即ち10万立米を超えるガスの原価は、労務費他の諸原価は10万立米分で賄う為原料費のみで、売価―原料費が利益となる(通常60%以上あり) 頑張ってガス販売量を増やすほど格段に利益が大きくなる。

  2. 原価算定における数値の丸め方については、料金算定要領に定めれており、それにしたがって算定するが、算定要領の改正等により原価緒元の端数処理の丸め方一つで利益が出る。例えば計算過程における四捨五入と切り捨ての取扱い方により、仮に立米あたり1円の差が出たとする。 これを東京ガスに当てはめると需要家881万戸(年間月平均25立米)とするとどうなるか、計算すると881万×25円×12=26.4億円/年増となるからすごい。

  3. 原料費調整制度の適用;公益事業料金(電気、ガス)においては、原料費(天然ガス、LPガス)の変動に応じて一定の基準(基準値を超えた場合)により自動的に料金が見直される仕組みを導入している。原料費を調整する指標としてCIF価格(財務省貿易通産統計値)の変動を基準として調整している。
このことはテレビ、検針表で○○月から○○円、値上げ、値下げします、と報道されているのを目にすることでしょう。したがって、CIF連動で値上げ、値下げができるので、石油のように値上げを飲んでもらえないので苦労しているのと大違いである。当初フリーマーケット育ちの私には感覚的に馴染めないものであったが、その仕組みを理解した時「いい制度だなー」と思った。石油製品でのやり方は、品質ではほとんど差別化はできず、売価だけでの差別化がそのほとんどで、情けない限りであったとつくづく思う。電気、ガスに比べ石油は政治的にはかなりお粗末であると協会に来て、公益事業に携わってみてつくづくそう思うのである。
  
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