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 普通は「60の手習い」ですが、私の場合は「70の手習い」で数年前から「フライフィッシング」をはじめました。
 餌をつけて釣るならだれでも釣れる(ほんとかな?)。そんなレベルの低い釣りはもう卒業だ(釣れないので諦めた?)、疑似餌で魚を騙して釣り上げるほうがホモサピエンスにふさわしいが高尚な釣なのだ!
 ということで無謀にもいい年してこれまで全くやったことのないことに挑戦したのです。
 疑似餌で釣る方法には大別して2つあります。
 簡単に言えば1つはルアーといって針を付けた魚の模型を水中で引っ張って魚を誘って釣る方法。もう一つはフライフィッシングで、フライ(文字通り「ハエ」の意)を模した毛バリで魚を誘う方法です。私が特に入れ込んでいるのは後者です。
 以前からこういう釣り方があるのは知っていましたが、ある時、ある所で巧みにロッド(釣竿)とライン(釣り糸)を操っている釣師を見てこれは面白そうだ、俺もやってみようかとなったのです。
 道具一式を手に入れ、フィシングスクールに通って若い連中に馬鹿にされながらキャスティング(ラインを投げること)の練習に励みました。 ラインを投げるといっても短いロッドでおもりのついてないラインを遠くまで投げるには力じゃダメ、遠心力と慣性の法則をうまく使わないと絶対無理です。若い人はすぐに体で覚えてしまうようですが、物理に弱い年寄りではなかなか身につかず、いまだにとても一人前とはいきません。がとにかく多少はキャストできるようになると当然ながら実際に魚を釣りたくなります。
 初めは主に管理釣り場(ありていに言えば釣り堀)で練習です。フライは市販のものを買います。しかしそこで問題が発生します。なにしろろくにキャストできないものだから魚を釣る前に木に引っ掛ける、岩を釣る、糸を絡ませる、等々で、すぐにフライをなくしたりダメにしてしまいます。そんなこんなで一日やってると10個ぐらいのフライはすぐにパーです。
高い入漁料を払った上、1個数100円のフライを一日に10個では年金生活者としてはたまったものではありません。しばらく続けましたが、これは堪らん、なんとかせにゃー、となり、やむなし、自分で作ろうと思い立ちました。
 そこでこんどは毛バリつくり(タイニングという)の道具と材料(マテリアル)を揃え、ショップの兄ちゃんに教えてもらったり「フライタイニング教書」なるものを買い込んだり、インターネットで調べたりとタイニング技術の習得に励むこととなりました。
 ところがやってみるとこれが面白く、ましてや自作のフライで魚をかけたりすると、まさに「してやったり。魚めどうだ、まいったか!」と有頂天です。
 タイニングは、雨の日などの暇つぶしにもってこいというだけでなくなにしろ非常に細かい作業なので(目が疲れる、肩がこる、と言ったことはあるでしょうが)、ボケ防止には有効なのではと思います。
 マテリアルは基本的には鳥の羽根、獣毛、絹糸と言ったところですが、これ以外はないというわけではなくむしろ何でも使えるわけです。そこで100円ショップをうろつき回り、何か使えるものはないかと探し回るのも創造性をかきたて、これまた脳にも良い刺激を与えることになるという派生効果も期待できるのです。
 100円ショップで仕入れたフライフィッシング用具転用、タイニング転用のものとして、ネイル染料(正式になんというのか?。女の子の爪染め絵具)、隙間風防止テープ、ミシン糸、瞬間接着剤、レース編み用のかぎ針、毛抜き、黒色ポリ袋、ヘアーブラシ、ゴムシート、カラーフェルト、金メッキチエーン等々枚挙にいとまなしです。どう使ったかはご想像にお任せします。
 フライフィシングに目覚め、本末転倒でタイニングにのめりこんでいる現況です。
 タイニングも楽しいが、本来のフライフィッシングはもっと楽しいものです。この釣りにもフライの種類によってドライとウエットがあり、私はフライを水面に浮かせてこれを虫と思った魚が突進してきたところをタイミングよく合わせて釣りあげるドライ釣法をもっとも好みます。魚は大抵フライが水面に落ちた瞬間に飛びついてくるので、うまくタイミングが合って釣り上げたときの快感はやった人でないとわからないでしょう。
 最後に、私の作ったフライに掛かってくれたかわいい可愛いイワナちゃんの写真をとくとご鑑賞ください。イワナちゃんの口に掛かったフライにもご注目!
 これからも目がなんとか使い物である限りタイニングに励み、体力が続く限りフライフィッシングを続けたいと思っています。

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