イヤ〜〜、テストやレポート付の授業を受講したのは、なんと、なんと50年ぶりでした。
2006年12月、名古屋での日本分子生物学会のプレナリーレクチャー講演「iPS細胞」
山中伸弥教授を、大盛会の中で受講して以来のiPS細胞の追っかけマンの僕は、ネット授業「よくわかるiPS細胞」の開講案内をネット「gacco」で
知った途端に、ワクワク ドキドキですぐに受講登録しました。学生時代には想像もしなかった授業形態のネット授業って、なに?
「これぞ関西人!」で、ちょっとお茶目の、そして黒柳徹子さんがホレホレの山中教授(徹子の部屋での2人の対談放映)も出演し、京大iPS細胞研究所
の若いスタッフによる原理から最新の状況までを、具体例で体系化した授業を受けてみたかったのです。「勉強好きだね 君は?」と思われるでしょう?違うの
ですよ。僕の脳の中には、いつもいくつかの追っかけマン遺伝子が棲みついていて、その遺伝子に動かされているだけなのです。「オオカミ」「サンショウウ
オ」「テニス 錦織選手」の追っかけマン遺伝子も棲みついています。それぞれのファイルもありますよ。
授業形式は、1週間に1回、約10分の動画配信の4回でした。1月14日開講〜2月4日閉講でした。山中教授は、バシと決めた背広姿で毎回の初めに授業の
方向・目的をお話され、次いで若い男女のスタッフのユニクロ姿での動作に、個性がチラチラとうかがえる解説の動画でした。
何回も練習して撮影監督からOKサインをもらった映像だろうと想像しました。
第1回動画配信は1月14日(水)午後3時からでした。僕は配信前からも、配信中も、もの
すごく緊張し集中していました。顔全体の神経細胞で、電気がネット状態に雷のごとく走り回り、もう顔面まっ赤赤、ビリビリしびれていました。遠く離れて
しまった神経細胞の先端と先端で電気を通そうとしてショートしたのです(こんなこと書くと僕の緊張感のない日常がバレバレ)。
動画や教材はスマートに垢抜けしたイラスト図と少しばかりの文字説明でした。表やグラフはありません。市販の出版物は文字ばかりで図は添え物でしょう。こ
の講義では反対の形式でした。
この講義のスタッフは考えたので
しょう。受講者の心と脳にストンとダイレク
トに内容が入っていくにはイラスト図が最適だと。絵文字の心得のあるスタッフで
す。ボリュームのある教材です。
4回の講義の後には、問題が待って
いました。2週間内に回答するには何を参考にしてもよし。
1回につき10問の問題。1問題には4〜5個の択一で選ぶ文章。1問題2点満点。10問で20点満点。4回で80点満点。記述式レポート20点総合満点
100点。総合得点80点以上で、受講修了証がiPS細胞研究所から
発行されました。
講義 第1週 iPS細胞の誕生の前後:
第2週 iPS細胞の再生医療への応
用:
第3週 iPS細胞の創薬への応用:
第4週 iPS細胞研究を支える環境:
択一問題は、次のようなものです。(配信問題のコピーペーストではありませんよ)
問題:iPS細胞関連について次の記述のうち間違っているものはどれでしょう。
@2012年ノーベル生理医学賞を受賞したのは、英国のジョン・ガードン博士(カエルの小
腸から取り出した細胞核を他のカエルの卵細胞に移植して初期化現象を発見)と英国のイア
ン・ウィルムット博士(哺乳類の羊でクローン羊ドリーを作り、羊でも初期化現象が起こる
現象を発見)と日本の山中伸弥教授(マウスの皮膚細胞に4個の遺伝子を導入し、初期化さ
れた多能性のある細胞の発見・発明)の3名である。
AiPS細胞発見・発明の発表当時は、皮膚細胞を初期化してiPS細胞がつくられたが、現
在では、血液など他の細胞からもiPS細胞をつくることができる。
B2014年9月高橋政代博士らは、患者の皮膚細胞からのiPS細胞由来の網膜色素上皮細
胞のシートを作り、加齢黄斑変性の眼の病気の治療を目指した移植研究を行った。
Cアルツハイマー病の患者からのiPS細胞で神経細胞を誘導し、アルツハイマー病の細胞内
のアミロイドβタンパク質の蓄積を調べたところ、アミロイドβタンパク質が細胞内と細胞
外に蓄積する2タイプがあることがわかった。
レポート:次の@からDまでを800文字でまとめて記述せよ
@iPS細胞の特徴について
AiPS細胞の再生医療の応用について
BiPS細胞の創薬への応用について
CiPS細胞の研究支援環境について
D講義を受講して感じたこと、思ったこと、考えたこと
(僕は書きました。iPS細胞技術は細胞の能力と人工技術のハイブリッド技術です。
iPS技術と他の?技術をハイブリッドさせたら、どんな新しい技術がうまれるかな?)
このレポートの採点方法が変わっていました。自分のレポートを提出すると、5名の受講者のレポートが配信されてきて、まず、これらを採点します。最後に
自分の提出したレポート(提出後は修正ができない)を採点します。採点基準が示されていました。
(採点基準:客観的に正しい情報が書かれているか)。
どのように採点しようか悩みました。たとえば、キーワード4つを書かねば完全ではない回答なのに、2つしかない場合の採点は? 僕は〇の評価をしました。
必要・十分な回答を採点基準としてないから。専門用語のキーワードを易しい言葉で表現した回答も〇。
ディスカッションのコーナーもありました。受講者やiPS細胞研究所の方のフェイスブックのような形式で、実に、にぎやかな紙面検討会の様子でした。細
かくこだわる人、おおらかな人、採点基準や採点者に意義を言う人、泣きつく人、理屈っぽい人 とにかく面白い。このコーナーだけを本にしたいぐらい。題し
て「iPS細胞を恋人にした人達」
僕が初めて知ったことは:国から多額の助成金が出ているのに、なぜ、山中教授たちは募金マラソンをするの?(2月の京都マラソンで4時間を切って完
走)。国からの助成金の使用は、期限内の直接の研究費と一部の研究者の人件費に限定されている。特許・広報費や教職員の90%の非正規雇用者の人件費は募
金の金額で賄っていることでした。
サイエンスカフェ・iPSカフェは大学構内だけでなく、街中の喫茶店内でも行われています。
NTTグループの運営する無料オンライン講座(MOOC)(gacco)では「よくわかる
iPS細胞」以外に48種類の講座があり、今や、gacco登録者は10万人を超えました。
良い意味でのストレスをこのような講座体験で楽しむのも、楽しいものです。
皆様も、好奇心に駆られて試してみては!
最後に
● 択一問題の間違いは@です。
ノーベル賞受賞者はジョン・ガートン博士と山中伸弥博士の2名です。
● 2006年6月「CELL」(細胞の学術誌)に山中教授らは、世界が驚いた「iPS細胞」
を発表しました。2012年ノーベル賞。